「枯葉の中の青い炎」辻原登

1936年巨人に入団、沢村と並んでエースとなり
39年には42勝15敗、38完投という
不滅の大記録を残したスタルヒンは、
191センチの長身から投げ下ろすストレートが160キロ出ていたと言う。
戦後パシフィックリーグに復帰、いくつかの球団を転々とした後、
55年の9月にトンボユニオンズで日本プロ野球史上初の300勝を達成し、
その年7勝21敗の成績(303勝歴代6位)で現役引退。

ロシア革命のあおりで祖国を追われ旭川に移住した彼には
数々の伝説がある。かっての剛速球投手の面影がなくなり、
ぶくぶく太ってしまった39歳のスタルヒン投手が、
300勝を目の前に風前の灯という時奇跡が起こる。
しかし40歳で突然この世を去る。
この秘密を知っているのは終戦でトラック諸島トールから
強制送還されてきた同僚のアイザワ投手だけ。

 「物理世界と精神世界を密かに結ぶシンクロニシティは、
日常世界にいくらでも起きていることではないか」

他に
妻の公認で結婚前の女子大生と同棲する「ちょっと歪んだわたしのブローチ」
失った嗅覚を呼び覚ます「水入らず」
もはやだれの息子でもない、家を出てしまった青年たちが・・「日付のある物語」
グロテスクなザーサイと金魚の大移動「ザーサイの甕」
私の中のごつくて優しい野球人の思い「野球王」 など

古い話や何処かで読んだ気がする本のくだりが、
現実世界と微妙にあるいはガラリと絡み合い、
不思議な感覚の中に迷い込む物語のうまさ。
フラッとめまいのする本だ。

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