創作の刺激をもらった吉村昭著『私の文学漂流』

相変わらずタブローを描くわけでもなく、
まして公募展に応募する気もなく細々と絵を描いているわけですが、
長年描いていると他に取り柄がない男としては、
生きている証のようになっているわけで、
それはそれで有難いことですが、
ともするとなまけ心が働いて無為な日々を送ってしまうものです。
そして苛立ち、投げやりな気分になってどんどん落ち込んで行くのです。

そんな時に巡り合った本が最近旅立たれた
吉村昭氏の『私の文学漂流』(ちくま文庫)です。

質屋通いをしながら同人雑誌に投稿していた時代に、
勤めを終えてから食卓の上で午前2時まで原稿用紙にペンを走らせ
7時には起きてまた出勤していたある日の夕方、
アパートのドアを開けたらこちらに背を向けた妻が、
ビロードのおぶい紐で子供を背負い、
茶箪笥のうえに原稿用紙をのせて万年筆を動かしている姿を見る
シーンに胸を熱くしながら、

何もそこまですることはないと思うような、
読み物の注文が来てもかたくなに文学への姿勢を貫き、
生活が苦しいのに断ってしまうような修業時代の吉村氏が、
妻の津村節子が先に芥川賞を受賞しながら、
自分は賞に見放され、必要とされなくなったと思い込み、
勤めに出ながら黙々と書き続ける一途な姿勢に、
クリエーターの見本を見たというか刺激を受けずにはおれませんでした。

描きたくなくても我慢して描き続ければ何とかなるのでしょうが、
そうもいかないので展覧会に行って刺激を受けたり
テレビの絵画に関する番組を見たりしていますが、
しばらく描いていないと
白い紙を取り出し、筆で描き始めるには大変なエネルギーが要るもので、
そんな物理的な行動だけでは何とも頼りないものです。

同好のサークルか絵画教室にでも入って、
描かなければならない雰囲気にしてしまうのも手でしょうが、
人と同じことをするのは肌に合わず、そんな時の作家の自伝に、
ふつふつとしたやる気のようなものが湧いてきました。






私の文学漂流 (ちくま文庫)
筑摩書房
吉村 昭

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