「だましだまし人生を生きよう」 池田清彦

キャッチコピーにあったような「過激」な人という印象はないが、
小さい時から好きだった虫を一貫して追いかけ、
同僚の女性を妻にして生物学への夢を奪いながら、
家庭を顧みず、片手間の副業で食つなぎ、
教授になってなおかつ虫を追いまくる生き様は、
ある意味過激かもしれない。

「だましだまし人生を生きよう」池田清彦 新潮文庫

ただ、ダーウィンの進化論に異論を唱える人だけに、
他の説に対する攻撃性は自身が述べているようにかなり激しいものらしい。

しかし、虫好きが高じたとしても、
チョウやカミキリ虫をそんなに際限なく収集してどうなるというのだ。

家の中は標本だらけで足の踏み場もなくなり、
生活に支障が生じる状態になっても、
やりたいことをやっている満足感に喜々としている様が目に浮かぶ。
そこが読者を引き付ける異常性だが、
部外漢の我々には本当に理解するのは難しい。

好きなことに一生を捧げる姿は、
画家や作家のそれとは違う、悲惨や赤貧とは別世界だ。
選んだ道が研究というアカデミーに籍を置いている環境なくして考えられない。
身分の保障があるからだろう。
でも「虫」だから面白い。

蝶やカミキリ虫の学名がカタカナで溢れているのには、
洋画の登場人物の名前すら満足に読めない、カタカナに弱い者としては、
辟易しかつ苦痛ではあったが、
読み進むにつれカタカナがすんなり読めるようになったのは収穫だったし、
自伝なのに将棋の段位や資格取りを自慢するようなことがなく、
ひた向きさが溢れていて好感が持てる。

虫に憑かれた男の熱意と異常さが、
最後までこの本から解放してくれなかった好著です。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック