ABC殺人事件

日ごろは雑読なので、
古今の名作と呼ばれるものには少々引け目を感じている。
かといってドストエフスキーやらの
世界文学全集に手を出す元気はないので、
自分に都合のよいミステリーの中から、
TVドラマ化されたのも知らず物色したのが

『ABC殺人事件』アガサ・クリスチィ 堀田善衛訳。

クリスチィ(堀田さん訳)は1976年に永眠。
この作品は1935年の作。立派な古典だし大変面白かった。




1935年6月に、私は、南アメリカの自分の農場から、約六ヶ月の滞在の予定で帰国した。私達の困難な時代で、ほかの人たちと同様、私たちもまた世界的不況になやまされていた。イギリスには、自分で手をつけなければとてもうまくいきそうにもない用事が、いろいろとあった。農場管理のためには、妻がのこった。




と堀田訳はゆったりと始まる。
焦ってはいけない、古典であるゆったりと読み進もう。
そして旧友を迎えたのは、
口ひげをたくわえた私立探偵ポワロである。




「エリキュール・ポワロ氏よ-君は、うぬぼれているのじゃないか、
あわれむべき鈍物のわがイギリス警察がもてあますような難事件
を解決できるのは自分だと?ひとつ、明敏なるポワロ氏よ、君の明敏
のほどを見せてもらいたい。だが、君にはこの胡桃はくだくに固すぎる
ようだ。今月二十一日、アンドーヴァーを警戒せよ。草々。ABC」




ポワロの手元には殺人を予告する挑戦状が届いていた。
そしてアンドーヴァーでアッシャー夫人(A)、
ベクスヒルでベティー・バーナード(B)と予告どうり殺害されて行き、
死体のかたわらにはABC鉄道案内が置いてあった。




いかにもそれらしい人物は犯人なのか違うのか。
英国人の排他的で傲慢な性格(と匂わせている)
がじわりと顔をのぞかすところ。
悠揚迫らぬポワロの嗅覚が難解な事件を推理して行くのが味噌。

どんでん返しを含みながら終局のポワロ節に発展するのが
名作と言われる所以か。
クリケットかラグビー、せいぜいサッカーの話が
少しは出てくるかと思っていたら、肩透かしを食ってしまった。




『ABC殺人事件』アガサ・クリスチィ 堀田善衛訳









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この記事へのコメント

2006年08月16日 09:34
殺人事件ながら、滋味たっぷりのビスケットと
吟味されたお茶の味が後に残る・・。
クリスティ作品がクリスティ作品たるゆえん。

ヘイスティングス君とエルキュール・ポアロ。
ワトスンとホームズに勝る関係性だと思います。

英国の歴然とした階級社会が
根っこのところでは、そう簡単に崩れないことを
どの作品を読んでも感じます。
mokku
2006年08月16日 21:25
ミステリアスなbody&soulIV さんなら当然外していない本だったのでしょう。早速反応していただいてありがとう。スコッチ舐めなめ読めれば最高だったのかもしれませんが、場違いな焼酎を飲んでは寝てしまう危険もあるので、頭のはっきりしている時に少しずつ読み進みました。
良い本です。

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