「薩摩燃ゆ」安部龍太郎

困窮の薩摩藩を立て直すため53歳の笑左衛門に下った命は

「十年で五十万両を蓄えよ。
それ以外に幕府や朝廷への上納金、
非常の場合の予備費をそなえておけ。
五百万両の借用証文を取りかえせ」
という前代未聞の無理難題だった。

同年の者はすでに隠居暮らしを強いられているのに、
藩主三代打ちそろって借財に苦しむ薩摩を救ってくれと頭を下げたのだ。
修羅となって薩摩藩のために事を成し遂げようと、
その時家老少左衛門は死んだ。

それから十余年、足を棒にし不可能を可能にして工面した金子も、
藩邸は上納金、接待、普請と湯水のような浪費を続け焼け石に水。
武士の奉公とは、君主のために命をなげうつことだ。
前のめりに死ぬのなら本望だと、飢饉・武家凋落の世、
不可能をにおわせれば陰湿ないやがらせを受け、
やむなく悪に手を染めて行く。

能力のある者を徹底的に利用して不要になればゴミのように捨て去る、
権力者の横暴はいつの世でもまかり通る倫理なのか。
主命であっても世継ぎ争いの世であれば、
代替わりしたら咎められ政争の具にされる。
国のため愛する妻子を捨てて
無き君主の命を全うした男の叫び声が聞こえて来る。

関が原合戦で西軍総崩れとなった中、
島津義弘が敵中突破し薩摩に帰還した気概の歴史が
主命をやり通す力になったのか。
苦悩しながら突っ走る笑左衛門に感情移入し、
歴史の重さに身を委ねて胸が一杯になる長編だった。

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